Glory

キング牧師を描いた映画『グローリー/明日への行進』(6月19日公開)の
テーマ曲「Glory」をHEAVENESEがカバー!!
「日本人だからこそ観るべき映画」そう語るHEAVENESEリーダー、マレ
今、なぜグローリーなのか。 その思いに迫る!!!

6. ”Japan-Negro”連合を恐れた米国

謎の人物

内田良平

還暦も過ぎた一人の日本人が、アメリカ政府を相手に黒人社会を舞台に戦いを挑んだという嘘のような本当の話は想像するだけで実に面白い。そんなことを考える男がいたのかと度肝を抜かれる。
FBIのファイルによれば、彼は日本の右翼団体「黒龍会」とも関係があったようだ。
右翼の巨人「内田良平」とつながっていたという。
本当かどうかは分からないが、FBIは、中根のバックに日本政府がいたのだと結論づけていた。

本当にバックに日本政府がいたのだろうか・・。
真相は闇の中だ。
謎が多いところが、この人物の魅力でもある。

日米交渉 ハル国務長官(中央)と共にホワイトハウスに向う野村大使(左)と来栖大使(右)(1941年11月17日)

不穏な空気

中根がデトロイトで活動を始めた1930年代、日本とアメリカの関係は急速に冷え込んでいた。
戦争の足音が忍びよる不穏な時代だったのだ。
きな臭い不穏な空気が漂い始めた頃、中根という男はFBIを悩ませる存在になる。

それは彼が発したメッセージが、アメリカ政府にとって最も頭の痛い問題だったからだ。
中根は、アメリカ国内で差別されている黒人社会に日本と連携するようにと訴えた。
「大日本帝国軍は、黒人たちを解放するためにやってくる!ともに戦え」というのだ。

今の私たちが、こんなことをデトロイトの街頭で叫んでも、頭のいかれた変人のうわごととして無視されるだけだ。もしかしたら、酔っぱらいの一人くらいは拍手をしてくれるかもしれない。
しかし、この時代はまるで状況が違っていた。
中根の訴えは、アメリカ当局にとって極めて現実的な脅威だった。
それは起ってはならない最悪の事態だったのだ。

アメリカ国内の抑圧された被差別民であるニグロたちが、日本と手を組み、アメリカにおける白人支配打倒のために立ち上がる・・。

これは想定されうる最悪のシナリオで、実際にアメリカが恐れたことだった。
歴史家ジェラルド・ホーンは書いている。(Race War/Gerald Horn ©New York University Press 2004)
— 米国にとって二グロ・ジャパン同盟は明らかにイライラさせる問題だった。

そうなのだ。実はこれこそ大きな脅威であり、現実に「起こり得る」問題だった。
実際に中根の活動は驚くべき速度でアメリカ黒人社会に広がりつつあった。
1994年に書かれたBlack Scholarの記事には「有色人種のチャンピオン」という記事が掲載されている。
—タカハシ(偽名)のデトロイト、シカゴ、セントルイスでの初期の活動は、さざ波のように中西部からミシシッピー、オクラホマ、ニューヨーク、ニュージャージーへと広がっていった。
何万人ものアフリカン・アメリカンたちは、大日本帝国軍こそが、アメリカの人種差別という暴虐から自分たちを解放してくれる救世主だと期待したのである。(Black Scholar volume 24 Winter 1994)

日本からきたメシア

あっと驚くことに、中根はメシアとして期待されていたというのだ。
彼は英語が堪能で、スピーチ力があったに違いない。
若かりし頃、理想に燃えたキリスト教の布教活動で磨き上げたものだ。
むかし取った杵づかとはまさにこのことだろう。
きっと彼の話し方、ジェスチャー、立ち居振る舞い、声のトーンには、黒人たちを惹き付ける魅力があったに違いない。
だがそれ以上に、何よりも中根がこれほど大きな影響力を持ち得たのは、個人のカリスマを超えた「日本の威光」の故であった。
何世代も差別に苦しんで来た黒人たちは、中根の背後にある「日本の力」に期待したのだ。

それは、日露戦争以降、日本は世界の有色人種の希望だったからだ。
第一次世界大戦では、連合国の一員として主要5カ国に数えられた国であり、それまでの数世紀に及ぶ、白人種による世界支配の構図を崩壊させた唯一の「有色人国家」だった。
日本は、欧米社会が無視できない「軍事国家」であり、ワールドパワーだったのだ。
そして日本は「有色人の為に戦う国」であると信じられていたのである。
だからこそ、黒人たちは中根に期待したのだ。
しかしそれは、中根の背後にある日本への期待だったと言い換えることができる。

日本の力

アメリカ向けに放送されたプロパガンダラジオ
パーソナリティ「東京ローズ」

それほど、日本の影響力は絶大であった。
また日本はこの時期、さかんにラジオを通じ、アメリカ国内の黒人たちに対して「日本に味方するように」と呼びかけていた。
米国内の撹乱を煽動する作戦を実行していたのだ。
中根の動きは日本の対米戦略と完全に連動しているように見える。

有色人種のために戦う日本。
黒人を救うためにアメリカと戦う日本。
このプロパガンダ戦略は中根の活動と相まって黒人社会に重大な影響を与えるものとなっていく。
「我々は日本と戦うべきではない」
そう信じる黒人たちは爆発的な勢いで増えていったのだ。



日本軍によるパールハーバー攻撃

恐れていた最悪の事態

そして、ついに日本はアメリカとの戦争に突入する。
真珠湾の奇襲攻撃に始まり、アメリカの植民地だったフィリピン、さらに大英帝国領だったシンガポールや、マレーシアなどが、次々と日本の手におちていく。破竹の勢いの大日本帝国。
そんな中でそれはおきた。
1943年6月20日のことだった。

1941年 真珠湾攻撃を報道する米国新聞
(リトルトーキョー)

7. デトロイト大暴動・・・.▶▶▶



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